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受取人にはなれない!?生命保険と内縁の妻の存在
突然ですが、同棲の彼女と内縁の妻は違います。
と、いきなりこんな話をすると、何を分かり切った事を言っているんだと言われそうですが、実際には、この違いを明確に説明できる方は案外少ないのではないでしょうか?
中には、何年間か寝起きを共にしているだけで、それはもはや内縁関係にあるとおっしゃる方もおられるくらいで、何となく別物である事は感覚的に掴めても、その境界線がはっきりとは見分けられないのが実際のところではないだろうかと思います。
そこで今日は、その辺りと生命保険の関係をご説明しましょう。
同棲と何が違うの!?
まず、同棲という単語を辞書で引くと、正式に結婚していない男女が一緒に住む事であるというような説明が出て来ます。
つまり、極端な話、今流行りのルームシェアでも、親兄弟、あるいは従兄弟や甥・姪などの関係を持たない男と女が1対1で入っている場合には、立派な同棲に当たるのです。
では、内縁はと調べてみると、正式な届け出をしていない夫婦関係の事であるとされ、なんと、同居している事という条件は、どこにもないではありませんか!?
そう、厳密には、どちらかと言えば、こちらの方が健全な関係だったりもするのです。
とは言え、やはり現実的に考えると、婚姻届こそ出していないものの、社会一般から見て、明らかに夫婦としての実質を持ち合わせているカップルで、当然のように一緒に住み、子供がいたりもします。
そこで、この関係を明確にし、その地位を確立するための目安として、最低限2つ、当人同士に夫婦としての自覚があって、同居している事という条件が、暗黙のうちに定められているものと想像できるのです。
ましてや、家計を共にしていたり、認知した子供がいたりすれば、それはもはや同棲の域を超えた内縁関係であると言っていいでしょう。
そこで、そうなると、法律上においても、ほぼ通常の夫婦と同じだけの権利が与えられる代わりに、義務も生じ、不要や貞操を維持しなければなりませんし、分かれる時には、財産分与だの、慰謝料だのという話し合いもしなければならなくなります。
そうはいっても、やはり入籍していない以上、どんなに仲睦まじくても親族関係にはなれない訳で、氏名変更や遺産相続の権利は発生しません。
そしてもう一つ、残念ながら、生命保険の受取人や被保険者にもなれないのです。
被保険者や受取人になれるのは契約者本人か親族のみ
というのも、生保というのは元々、契約者と被保険者や受取人が同一であるのが基本であって、それに準ずる形態として、この3者を3親等までの親族で形成する事が認められているものだからです。
すなわち、被保険者や受取人になれるのは、契約者本人か子供、もしくは親兄弟、せいぜい祖父母か叔父・叔母くらいまでという事になるでしょう。
ちなみに、妻は一心同体という事で、正しく0親等!
どういうポジションにも同道と首を突っ込めます。
そのため、最も多いパタンとしては、契約者と被保険者が夫で、受取人が妻というパターンなんですね。
また、この逆でも全然OKですし、受取りのみを子供にするという事も珍しくはありません。
しかし、親族関係にない内縁の妻や夫の間では、こういう契約形態は一切成立させられないのです。
そこでどうすればいいのか?
最も手っ取り早い作戦としては、一時的に入籍し、取り敢えず生保加入が完了した時点で除籍するという方法でしょう。
中には、必死に保険会社と交渉し、やっとの思いでOKをもらわれる真面目な方もおられるようですが、それでも、実際問題、その訴えが受け入れられるケースはまだまだ今の日本では少なく、最終的には骨折り損の草臥れ儲けで終わってしまう例が後を絶ちません。
ならば、やはり事実を作るに限るという訳です。
一度契約すると被保険者の変更はできない
ただ、これだと、女性の方にはどうしても離縁の痕跡が残ってしまい、所謂戸籍が傷つく事にはなりますが、だからと言って、将来に大きく支障が出るような事はめったにないでしょう。
何せ、今や、結婚も離婚も経験のうちという時代で、バツの一つや二つ、気にする人などほとんどいませんし、取り敢えず保険加入を考えるくらいの関係なんです。
そう容易に別れる事はないだろうという前提のもとに話を進めていいものと見られます。
それに、これは万が一の話ですが、単に保険金目的であったとしても、それを確実に受け取るには、やはり1年以上は保険料を払い込み、おとなしく生活している事が大切です。
離婚して半年以内に再婚なんていう事もナンセンスな訳で、至って大きな問題のない手段であると言えるのではないでしょうか?
でも、籍を抜けば、また再び親族関係がなくなるんだから、生保の被保険者や受取人の地位も引きずり下ろされるのでは・・・?
そんな心配をされる方が大勢いらっしゃいます。
これは、通常の離婚においても気になるところですよね。
されど、この点については、全くもって心配ご無用!
まず、いかなる事態に陥っても、被保険者の変更はできず、仮にその名義が元夫や元妻であっても、そのまま継続するか、解約するかの二つに一つです。
そして、その選択権は全て、契約者に委ねられているのです。
しかも、驚くべき事に、契約者と被保険者、そして受取人が配偶者間で成立していた生命保険については、契約者の同意さえあれば、そのままの形で存続する事が可能だと言うではありませんか!
だからこそ、今回のような手段が有効になるという訳ですね。
相続税の控除枠に入れない事例
また、契約者名義を受取人と同じパートナーに変更する事も容易で、その場合は、被保険者が他界した際に受け取る保険金は所得税の課税対象となります。
すなわち、配偶者にそれなりの支払い能力があるのであれば、税金面では、その方がお得になりそうだという事です。
ただし、内縁関係に戻ってしまった以上、法定相続人としての権利も失いますから、契約者と被保険者が同一人で、受取人のみがパートナーだった場合には、その保険金は贈与税の対象となり、10万円を超えると納税義務が発生します。
確かに、遺産相続の話し合いの際の特別受益には該当しないものの、相続税の控除枠にも入れられないという事は知っておかれた方がいいでしょう。
加えて、これは、どちらの名義にしても当てはまる事ですが、年末調整や確定申告の際に申請できる生命保険料控除の対象にもなりません。
何故なら、ここでは契約者が誰かは完全に無視され、単に、親族を受取人にした生保の払い込みをしているもののみに与えられる特権と定められているからです。
とは言え、いずれにせよ、先述の通り、契約者との親族関係が全く消滅してしまってからでは、こうした名義変更はできなくなりますので、必ず除籍する前に手続きを完了させておく事が絶対条件です。
その際、税金の損得勘定も含めて、どのような形態にするのがベターなのかを検討されるといいでしょう。